日本DNA多型学会 第23回学術集会

 日本DNA多型学会 第23回学術集会へのお誘い

 このたび,日本DNA多型学会 第23回学術集会を,本年11月27日(木)・28日(金)の両日にわたり,JR名古屋駅前にあります愛知県産業労働センター「ウインクあいち」にて開催いたします。名古屋では1996年の第5回学術集会(勝又義直会長)以来2度目の開催となります。当時の学術集会は法医学分野の演題がその大半を占めておりましたが,当初より動物・植物のDNA多型に関する発表もなされ,この第5回学術集会では ancient DNA に基づく分子系統学に関する招待講演(名古屋大学(当時)小澤智生先生)も企画されるなど,畜産・農産物の管理あるいは野生動植物の保護といった分野へのDNA多型の応用の広がりが,学会内外ですでに十分意識されていたことがうかがえます。18年の時を経た今,ゲノム研究は大きな革新を遂げ,生物種の多様性と進化の過程に関する理解に大きく貢献するとともに,本学術集会での研究発表にみられるような,ヒトの個人識別やDNA鑑定技術の開発,動物の生態調査や系統解析,農林水産物の種判別や産地識別など,社会的諸課題の解決に寄与する研究も進められております。

 学術集会は一般演題の発表を主体としておりますので,会員各位から多くの演題応募をお待ちしております。また今回は,藤田保健衛生大学総合医科学研究所遺伝子発現機構学研究部門教授,前田 明先生をお招きし,「生命現象を支える多種多様の蛋白質が正しく作られる仕組み:遺伝子に隠されたスプライシング調節暗号を解く」という演題でのご講演をお願いいたしました。蛋白質の設計図であるmRNA生成過程でスプライシングが正確に行われる仕組みや,その異常と癌を含めた様々な疾患との関連について実例を交えてご紹介いただけるとのことで,会員の皆様にとって非常に興味深いご講演になるものと思います。もうおひと方,岩手医科大学全学教育推進機構教養教育センター生物学科教授の松政正俊先生には,「三陸の渚:その大規模撹乱に対する脆弱性と頑強性」という演題でのご講演をしていただく予定です。東日本大震災は法医学をはじめとする本学会に関与する諸分野に対して大きな課題を突きつけ,そのことは昨年の仙台での学術集会において改めて痛感させられたところです。松政先生は発災後の三陸沿岸における干潟生態系の回復過程やカキの天然採苗の試みについて追究されており,またその他の無脊椎動物の個体群変動に関する研究もなさっております。本講演では遺伝的多様性にも関連したお話をしていただけるとのことで,大変期待しております。

 さらに,学術集会にさき立つ11月26日(水)には名古屋大学大学院医学系研究科山本敏充先生のお骨折りにより,同会場にて「ラテンアメリカの成り立ち---文化から最新ゲノム科学まで--」というテーマで,6名のシンポジストをお招きし,公開シンポジウムを例年同様開催いたします。集団遺伝学(DNA多型)・文化人類学・考古学などの観点から,われわれから見て地球の裏側にあたる,中南米の諸相につき各先生方にご講演いただく予定です。会員の方々だけではなく,一般の方々にも気軽に参加いただけますし,楽しい会になるものと思いますので,多くの方のご来場を心よりお待ち申し上げております。


 第23回学術集会 大会長 青木康博(名古屋市立大学大学院医学研究科法医学分野 教授)

 

*なお,演題はいずれも仮題です。詳細(第1報)は6月にご案内申し上げます。

 

 

C)日本DNA多型学会 2013