日本DNA多型学会について
DNA(デオキシリボ核酸)は、すべての生命体が有する、その種、その個体の設計図のようなものです。DNA多型の研究と聞いて、皆さまはどのようなことを想像するでしょうか。研究室にこもり、高価な分析機械に試験管から試薬を入れたり出したりしている、そんなところではないでしょうか。しかし、DNA多型の研究者は、DNAを求めて地球の隅々まで足を運び、調査研究を行っています。いくつか例を挙げますと、漁船や海洋調査船に乗り、深海魚を採集して魚類の系統進化を調べる。アフリカのジャングルでチンパンジーの群れと一緒に移動し、彼らが残した糞に付着したDNAを分析して家族構成を推定する。遺跡から出土した人骨からDNAを抽出し、日本人の起源を探る。日本の農家が苦労して品種改良した果物が違法に海外へ持ち出され、大量に栽培された末に逆輸入されていないか確認する。犯罪現場に残された遺留品に付着したDNAを分析し、犯人を特定する。このように、DNAを用いた研究は、私たちの日常生活にも深くかかわるようになりました。
日本DNA多型学会は、DNAを研究対象とした医学、水産、動物、植物、人類、法学、その他といった分野の研究者が集う学会です。世界的にも例のない、きわめて学際的な学会です。本学会は、1991年10月に「DNA多型研究会」として産声を上げました。そして1995年から、現在の「日本DNA多型学会」となり、2016年10月に一般社団法人「日本DNA多型学会」となりました。様々な分野の研究者が集い、研究発表と情報交換を行う学術集会を毎年開催し、学術雑誌『DNA多型』を年一冊出版しております。基礎から応用分野まで、DNAを共通の研究対象として扱う研究者が集う日本DNA多型学会をよろしくお願い申し上げます。
一般社団法人 日本DNA多型学会
理事長 猿渡 敏郎